ミクロ経済学において、完全競争市場というモデルは極めて重要だ。実際には完全競争が成り立っている市場というのは存在しないのだけど、この極端なモデルが複雑な経済環境を分析する上で必須となるのだ。完全競争市場では、個別の企業はprice takerとなり、自らが価格戦略をとることができない。できるのはその所与とされる価格でどれくらいの数量の製品を生産するかというだけだ。この状態をStrategic Hellと呼んでいる。とるべき戦略がないからだ。唯一の選択はコストを切り下げるコストリーダーシップ戦略をとることで、利益を上げることになるけど、完全競争市場では、参入障壁はゼロという前提なので、超過利潤を得る企業が出れば即座に新規参入が表れたり、既存の競合が同様にコストを切り下げたりして、超過利潤はなくなってしまう。

だから、完全競争市場から抜け出すことが重要になるのだ。ただ、完全競争市場は他にも消費者が完全な情報を持っていることや取引コストがかからないこと、など現実には難しい前提を置いている。でも閉じられた空間に限定すると似たような環境にはなる。例えば会社に売りにくる仕出し弁当とか。業者は簡単な許可で出入り自由だとすると、従業員はそれぞれの価格をすぐに比較できるし、どこも似たようなメニューで価格以外に大差がないって話が完全競争市場だ。しかし完全競争市場は企業にとっては望ましくないので、基本的に弁当屋やレストランは「味が違います!」と宣伝して差別化を図るというわけだ。


まずミクロ経済学は完全競争市場のコンセプトをマスターし、それから不完全競争市場、独占・寡占市場を勉強していくということになる。それらは完全競争市場を応用的に考えることで理解できるようになるということらしい。