MM命題については以前書いた。完全市場においては、資本構成は企業価値に影響しないというものだ。この命題は、企業の配当政策にも適用できる。完全市場において、企業の配当政策は企業価値に影響しない、というのがMMの配当命題だ。


これについては、一般的なイメージと違うかもしれない。まあ、現実は完全市場ではないので、そうなのだけど、完全市場を考えても一般的なイメージとは異なるのだろう。配当の時期になると、トヨタが株主還元1兆円が見えてきた、とか、配当が少ない企業はケチだ、という話は新聞紙上でもよく見る話だ。しかし、完全市場においては、稼いだ利益を内部留保に回そうが、配当しようが、自社株買いしようが、株価には中立だ。ざっくりいうと、内部留保に回すとその分株価が増えるのに対して、配当すると現金もらえるけどその分株価が下がる、自社株買いすると株式数が減るけど資産も減るから株価は配当と変わらない。結局、配当改策は企業価値に影響しない。


ただ、現実には、キャピタルゲインにも配当にも税金がかかる。その分だけ企業価値に影響するし、株式を取引するコストも発生する。とすると、投資家としても、なるべく現金で貰いたいのか、株価の値上がりで将来キャッシュにしたいのかという要望もそれぞれで、企業価値は影響を受ける。

ただ、一つ言えるのは、配当しないからと言ってその会社がケチだ、と考えるのは短絡的だ。急成長しているベンチャーでは、配当するよりさらなる急激な成長をしてもらって株価を上げてもらうほうが有難いのだ。実際の事例でも、ベンチャー企業が配当を始めると、「あの会社の成長もこれで打ち止めか」的なイメージになって株価が下がることもある。企業の配当政策は深くその背景を考える必要があるのだ。