社員のモチベーションを上げるにはどうすればよいか。単純に報酬と罰則の組み合わせればいいかというと、そう単純ではないだろう。単純労働で製品を1個作るたびに100円、100個以下しか作れなかったら罰金、というほど今の世の中の仕事は単純ではない。そもそも成果を図ること自体が難しい仕事もたくさんある。

その一つの解決策として、すでに多くの日本企業でも導入されていると思うけど、マネージャーと社員が共同で共通の目標を設定して、コミットすることだ。結構毎年目標設定面談を上司とやる人も多いと思う。企業って結構勉強熱心で、勉強してから会社の制度を調べると、ああこの理論に裏打ちされているのね、と気づくことが多い。この制度はVloomの期待理論(Expectancy Theory)や、アダムスのEquity TheoryLocke and LathamGoal setting理論が元になっていると思う。特に目標設定は、SMART、つまりSpecific, Measurableachievablerelevancetimelyをしっかり意識して設定することがモチベーションアップに有効だ。また、実現した際の報酬は、それぞれの従業員が価値があると思っている報酬が明確であることが重要だ。これを成功したら海外留学したいと思っている従業員には給料アップよりも留学がいいだろうということ。

結構これに忠実に人事制度を作っている会社は多いと思う。でも、従業員レベルでは毎年面倒くさいなあと煙たがられている。なんでかと言うと制度だけ作って、運用があいまいだからだ。会社は基本的に人事に関して将来の約束はしない。海外留学ですら約束できない企業は多い。なので結局この面談でのこの評価が具体的にどんな報酬につながったのかわからない。さらに最近はこういったモチベーション理論が一般化してきて頭ごなしに怒ったり全否定する上司が減った変わりに、みんなとりあえずほめるので、ほめられている割には、給料が上がらないとか、留学させてもらえないとか、出世しないなとか、いう風に感じるようになって、結局あれはなんだったのか、と。

ちゃんと達成したときの報酬のコミットメントとセットじゃないとうまく機能しない。結果、制度と日本的なあいまい文化が交じり合って、「人事は裏帳簿をつけている」という疑心暗鬼を生み出す結果になってしまっているのは皮肉だ。