ベンチャー企業が株式を公開することは、いまだに創業者にとって一つの目標であるようだ。株式を公開すると、資金市場にアクセスできるようになって、信用も高まるから、さらなる株式発行とか、大規模なデットの調達とかにも有利で、さらなる成長を追求できる、というメリットがファイナンス理論的には説明されているけど、実際は、そんなことより成功のあかしとしてのステータスと創業者への金銭的なメリット、というほうが大きいかもしれない。


しかしながら、IPOにおいて、売り出される株の株価は、実は結構過小評価されている。売出価格と取引初日の終値を比較すると、終値のほうが圧倒的に高い場合が多い。これはなぜ起こるかというと、ひとつには、引受する証券会社のリスクヘッジのインセンティブからだ。証券会社は引受価格よりも株価が下がると損をしてしまうので、引受価格よりも確実に高く売れるという確証がほしいということだ。さらには、価格決定の際に行う需要調査でも、投資家は基本的に安いほうが嬉しいので、安めの価格を提示するインセンティブがある。発行企業にとっては、もっと高い価格で発行できたのにという恨み節は残るけど、終値が下がったり、売れ残るのは恥でレピュテーションも棄損するので、まあ、0verpricingよりはましという感じになる。


というわけで新規公開株は人気が出る。しかし、IPOの長期的なパフォーマンスをみると、思わしくないことが多い。ということは新規公開株を変えるチャンスを得た人は初日に売り払うのが最も確実だってことになる。実際、一昔前は確実にもうかると大人気だった。でも、実際には値下がりする株も多いし、値下がりする株は値上がりよりも急激に下がることが多かったりして、IPOだけ狙っていてもトータルでは損をすることにもなる。


くれぐれも株式投資は自己判断でお願いします。