Warwick MBA by Distance Learning修学日記

英国University of Warwick(ウォーリック大学)の経営大学院Warwick Business School MBA by Distance Learning コースについて、勉強の日々を綴ります。

2015年10月

隣の芝は青くない

前回、多角化した企業は本当に望ましいのか、ということを書いたけど、それに関連して面白い論文を読んだ。隣の芝は青くないっていうタイトルの論文で、多くの企業が新しい分野への開拓を企図してビジネスを成長させようとするけど、それは間違っているというものだ。


その調査結果によると、長期的にみれば各産業間の平均のリターンの差は、産業内部の企業ごとのリターンの差よりもはるかに小さいというものだ。すなわち、産業ごとにみると、エアラインもメディアも、建設業界も、コンピューター業界も、業界ごとの差など本の微々たるもので、あっちの業界がもうかっているからわが社の生きる道もあっちの業界だ、と思うのは根本的に間違っているってことになる。もちろん、短期的なブームはあって、一時期高利益率を誇る業界は出てくる。しかし、ブームはやがて終り、平均に落ち着くことになる。


ここで重要な点は、業界内部の企業ごとのリターンの差のほうが大きいってことだ。つまり強い企業はどの企業にいても、しっかりと利益を稼げる。コンピューター業界も見ても、ソニーが不振である一方、アップルは世界一の高収益企業でもある。不振の原因は、その業界にいるのではないのだ。コンピューター業界を見限って不動産業界に行こうってのはどうか、ってことでもある。


しかし、業界が悪いっていうのは、経営者にとっては都合の良い言い訳だ。そう考えると、やっぱり企業の多角化は、エージェンシー問題が前面に出てくる筋悪の戦略と言えるかもしれない

多国籍企業の強み

多国籍企業の強みの源泉は何か、と言えば、真っ先に思いつくのはその規模だろう。規模の経済を享受できるからだ。これは、規模の拡大に伴うユニットコストの低減を意味する。


もちろん、多国籍に展開するってことは嗜好の異なる消費者向けに様々な商品を提供することになるので、同じものを作るわけではないけど、RDなどの費用は、単位当たりにするとかなり薄めることができる。さらには、違う商品でも部品を共通化したり、プラットフォームを合わせると、購買力が増し、商品レベルでもコストは削減する。一時期自動車業界では400万台クラブって言葉が流行ったけど、規模がないと競争に勝てないって意味だった。あんまり正しくなかったけど。


一方コスト以外のメリットもある。ひとつはブランドカの強化だ。海外で飲み物買う場合コーラであればとりあえず安心だし、日本でなじみのあるレストランのほうが海外でも入りやすいし、カルフォルニアに出張が多い人は三菱銀行のほうが他の銀行よりも使いやすくていいだろう。

しかしデメリットもある。多国籍に派手に展開していると最近ではテロの標的になりやすいだろうし、リスクを分散できるかと思いきや、あちこちでたくさんのリスクに直面するだけってことにもなりかねない。戦略オプション的にも全方位外交はニッチャーのフォーカス戦略にやられやすい。トヨタの最大の脅威はVWではなく、テスラかもしれないのだ。VWはまあ、いろいろと今大変だけど。


しかし、この件、トヨタとしてはコモディティ化を避けるために、次世代エコカーのスタンダードを電気自動車ではなく水素自動車にしたいのだろうけど、自宅でも簡単に充電できるのに、わざわざ水素を積む車って必要あるのかな??ただ、水素も別の形で将来、大化けするかもしれないし、なかなか将来は読めない。

コングロマリットは幻想か?

戦略論において、企業の業態は、シングルビジネスがいいのか、マルチビジネスがいいのかって論点は、いまだに決着がついていないようだ。その時々の流行りがあって、多角化だ!ってのがブームになったり、集中!ってのがブームになったりしている。足許流行っているフレーズは、「選択と集中」だから、その中間でシングルビジネスとまでは言わないけど、得意分野に集中すべきだ、ってのが流行りなのかな。


それぞれにその理論をサポートする検証結果が出ているけど、マルチビジネスがいいっていう主張の根拠は主に、世界中の大企業を見れば、みんなマルチビジネスじゃないかってことらしい。まあ、確かに大企業で、ひとつのビジネス以外は一切やっていませんって会社もあまり思い当たらない。マルチビジネスがいいっていう理論的な理由は、範囲の経済を享受できること、ブランドの露出が高まってブランド価値が高まること、多角化でリスク分散がきくことなどだ。


一方、シングルビジネスのメリットは、リソースを集中的に投下できるので強みを伸ばすことができるってことだ。個別のビジネスでは確かにこういう事例は思いつく。例えばダイエーは、幅広い商品の品ぞろえで勝負したけど、各分野の小売店、洋服はユニクロ、生活雑貨はホームセンター、家電は量販店に負けて、「なんでもあるけど買いたいものは何もない」と言われる状態になってしまった。

つまりこの争いは、限られたリソースを集中することで強くなるのか、広く分散することで強くなるのかってことでもある。このように書くと集中のほうが強いでしょ、というイメージだけど、世の中の大企業の形態を説明できないとも言える。


一つ言えるのは、発展途上国においては圧倒的にコングロマリットが強いということだ。インドのタタグループとか。発展途上国では、国との結びつきが強く国支援を受けてビジネスをしているからだろう。そう考えると、マルチビジネス企業の本当の強みは、先進国でも幅広い分野に影響力を持つことで政治力を持ち、政策を自分たちの有利なように変更できるから、と言えるかもしれない。

Strategic Clock

今週から、ENVCは忘れて、SAIBの勉強を再開。この2か月間はENVCにかかりきりで、WWSAIBはちょっと勉強しただけで、実質2か月ぶりの再会だ。いまいち、テンポが戻らない。まずはSAから再開。今回はStrategic Clockについて。ポーターの戦略論を補完するフレームワークだ。


Competitive advantage
を構築するstrategic optionはコストリーダーシップか差別化で、中途半端になってはいけない、どちらかを明確に選択しなさい、というのがポーターの戦略論のコアであって、戦略論におけるアカデミックな世界でのポーターのプレゼンスは本当にすごいのだけど、もちろん、反論はある。


一番の反論は、想像のとおり、戦略オプションが二つだけってことはないだろうというものだ。そこでもっと精緻化したオプションを編み出しのが、Bowmanstrategic clockというものだ。といってもまったく新しい戦略論を編み出したわけではない。これも縦軸にperceived value、横軸にPriceを置いて、八方向の戦略を示しているので、やっぱり評価軸はポーターと同じ「価格と差別化」と言えるかもしれない。八方向も低価格で低バリューは安かろう悪かろう、低バリューで高コストは独占とか分類されていて、低価格中バリューや高バリュー中価格が現実的に実行可能である一方、中価格中バリューは負け組、となっているので、内容もポーターとあんまり変わらない。ならばポーターの戦略論のほうがシンプルイズビューティフル、ってことでやっぱり優れている。ただ、このStrategic clockは、ポーターが何を言いたいかということを考えるときの指針としてはよく使えると思う。教員向けの教材って感じかな。

ENVC最終アサインメントの提出

9月にF2Fで受講したENVCの最終アサインメントを提出した。提出期限がF2F終了後1カ月なので、なんとか期限前に提出できたというところだ。F2Fの授業の初日に課題は発表されたので、キャンパスでこつこつを書きあげることもできたかもしれないけど、オンキャンパス受講中は、キャンパスライフを満喫したいという思いが強く、時間がないし、体力的も厳しく、課題に取りかかることはできなかった。帰ってきてからも消耗が激しかったのと、シルバーウイークは急速とリフレッシュが必要と割り切っていたので、実質シルバーウイーク明けからの取組となって、時間的に厳しかった。


内容的にも、どのようなバランスで書くかを迷ったところだ。Entrepreneurshipのモジュールだけど、内容はビジネスプランの策定ではなく、マインドセットに重点が置かれているモジュールだった。実際課題の説明では、このアサインメントは、採点者へのビジネスプランのピッチではないぞ、という注意があった。また、過度に経済環境分析とかに時間を取られるな、という注意もあった。でもこれはバランスが難しい。ある程度、ビジネスプランの説明をしないと、その後の展開が続かないし、プランを示すなら、外部環境分析もある程度は必要になる。ただ、本題は、そのプランの分析に加えて、自分のlifestyleとの融合なので、如何に自分のライフスタイルとマッチするかをかなりの分量を書かないといけなそうだ。ビジネスで成功しても、家族がバラバラで本当に幸せか?そこまでちゃんと考えて、起業の是非、タイミングを身か払うことが肝要、というのがこのモジュール全体を通してのテーマだったと思う。そこらへんのバランスがうまく書けたかどうか。。。


しかし、そんな気になる点があるなら時間いっぱいもっと検討すればいいじゃないか、という話なのだけど、3連休はもう遊びたい。MBAも後半に突入したので、過去の平均点を下回るマークは取りたくないという気持ちがわいているのも事実だけど、形式的に字数を埋めて完成形になると、そこからさらに推敲するのは強い精神力が必要だ。日本人一般はそういう強みを持っている人が多いけど、僕には持ち合わせていないようだ。ということで提出。

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