前回、多角化した企業は本当に望ましいのか、ということを書いたけど、それに関連して面白い論文を読んだ。隣の芝は青くないっていうタイトルの論文で、多くの企業が新しい分野への開拓を企図してビジネスを成長させようとするけど、それは間違っているというものだ。
その調査結果によると、長期的にみれば各産業間の平均のリターンの差は、産業内部の企業ごとのリターンの差よりもはるかに小さいというものだ。すなわち、産業ごとにみると、エアラインもメディアも、建設業界も、コンピューター業界も、業界ごとの差など本の微々たるもので、あっちの業界がもうかっているからわが社の生きる道もあっちの業界だ、と思うのは根本的に間違っているってことになる。もちろん、短期的なブームはあって、一時期高利益率を誇る業界は出てくる。しかし、ブームはやがて終り、平均に落ち着くことになる。
ここで重要な点は、業界内部の企業ごとのリターンの差のほうが大きいってことだ。つまり強い企業はどの企業にいても、しっかりと利益を稼げる。コンピューター業界も見ても、ソニーが不振である一方、アップルは世界一の高収益企業でもある。不振の原因は、その業界にいるのではないのだ。コンピューター業界を見限って不動産業界に行こうってのはどうか、ってことでもある。
しかし、業界が悪いっていうのは、経営者にとっては都合の良い言い訳だ。そう考えると、やっぱり企業の多角化は、エージェンシー問題が前面に出てくる筋悪の戦略と言えるかもしれない